日本人のための憲法原論作者: 小室直樹出版社/メーカー: 集英社インターナショナル発売日: 2006/03/24メディア: 単行本購入: 10人 クリック: 128回この商品を含むブログ (61件) を見る

ケインズ有効需要*1を増大させる手段として、1つは政府による公共投資、もう1つは利子を挙げています。公共投資の無限波及効果で有効需要を増やすと同時に、利下げを行うことで民間の投資意欲を刺激しようというわけです。
中略
しかし、ケインズはこの2つの政策を行うに当たって、注意が必要だと言っているのです。まず第一は、利子率をあまり下げすぎるのは問題であるという点です。
彼は「ジョン・ブル*2はたいがいのことは我慢できるが、2パーセントの利子率には我慢できない」と書いています。利子率があまりに低下することを、ケインズは「流動性の罠」(Liquidity trap)と呼びました。
中略
さらにケインズは第二の注意として、「有効需要拡大政策を長く続けると、その有効性は失われる」とも指摘している。あまりに長く政府が介入し続ければ、もはやその国からは経済の自由は消え、社会主義になってしまうと。
中略
ケインズ経済学を批判する際によく言われる言葉として「ハーベイ・ロードの仮定」*3という有名なキーワードがあります。
中略
ケインズは無意識のうちに「役人は無欲で、しかも正しい判断ができる」と仮定しているが、その仮定がいつも成り立つとはかぎらないというわけです。

370頁〓372頁

*1:[経済学]総生産は有効需要と等しくなる

*2:英国人の別名

*3:ケインズの生まれたケンブリッジの地名。当時のイギリスの知識階級は、いい意味のエリート意識、つまり私欲を捨てて公共のために尽くすという意識が強かったことから